2005年02月03日

Book「龍は眠る」

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龍は眠る 新潮文庫
著者:宮部みゆき

『嵐の晩だった。雑誌記者の高坂昭吾は、車で東京に向かう道すがら、道端で自転車をパンクさせ、立ち往生していた少年を拾った。何となく不思議なところがあるその少年、稲村慎司は言った。「僕は超常能力者なんだ」。その言葉を証明するかのように、二人が走行中に遭遇した死亡事故の真相を語り始めた。それが全ての始まりだったのだ…宮部みゆきのブロックバスター待望の文庫化。』

 宮部の初期の作品にあたる。原点と言っても問題はない、超能力をテーマにしたものだ。映画化もされた、後の「クロスファイア」などへとつながっていく、超能力を持つが故の苦悩、自分探しのようなものが描かれている。
 一番外郭の印象では「クロスファイア」で用いられる能力とは見た目の派手さがないため、全て心理描写や言葉でしか事象を表現できない。そのため、ちゃんと物語に入り込んでおかないと冷めた感触しか残らないだろう。
 ただ、単に能力者を持ち上げ矢面の舞台に上げただけの物語でなく、過去に汚点を持つ者、障害を持つ者など、あるいは読者も当てはまる人間全体のとらえかたをでもって、“眠れる龍”として主題をまとめあげたところは、宮部さすがと感嘆し、物語の結末と別のところで印象に強く残った。
 文中の一節、能力者・慎司のこんな言葉がある。「ほっとするんだ。ああいう―――自然の大きな力を見てると。僕なんか、取るに足りないちっぽけなものなんだって分かるから。僕、ときどき、すっごく自分が偉くなったような気がしちゃうからさ。他人のこと、何でも分かるから。そういう選ばれた人間なんだって思っちゃう。それって、嫌なことだよ。」
 十人十色、得手不得手がある人間の中で、迷ったり悔やんだりしない人間はいない。マイナスの部分を持つ人間と同じ位置にプラスの部分を持つ人間もいて、どう自分を見つけられるかで一歩一歩進んで行ける。宮部の生み出した“普通の人間”が、彼らなりに生きて答えを見つけ、宮部に語り返すのだ。
posted by Jori at 09:19| Comment(0) | Book | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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